アレルギーを持つ子どもたちは、日常生活の中で急な体調変化を起こす可能性があります。特にアナフィラキシーショックは、特定のアレルギー物質に対して全身に重篤な症状を引き起こす急性のアレルギー反応であり、適切な対応が遅れると命に関わる危険があります。この記事では厚労省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(2019年改定版)を基に、アナフィラキシーの症状やエピペン(アドレナリン自己注射薬)の使い方や保育園全体で組織的に対応するためのポイントを解説します。
エピペンとは?

エピペンは、アドレナリンという薬剤を含む自己注射型の医療器具で、アナフィラキシーショックの初期対応として非常に重要な役割を果たします。アドレナリンは心臓の働きを強めたり、末梢血管を収縮させたりして血圧をあげる作用があります。アナフィラキシーショックに陥ると、呼吸困難や血圧の急激な低下が起こるため、アドレナリンを迅速に体内に投与することでこれらの症状を緩和し、命を救うことができます。アレルギー疾患を持つ子どもが多く通う保育施設では、緊急事態に備えてエピペンの取り扱いや使用方法を理解しておくことが重要です。
アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーの症状は急速に進行し、体の様々な機能に影響を及ぼします。特に次のような症状が見られた場合、速やかにエピペンの使用を検討し、医療機関に搬送する必要があります。
呼吸器系の症状
- 喉や胸が締め付けられる感覚
- 声がかすれる
- 犬が吠えるような咳
- ゼーゼーした呼吸や息苦しさ
消化器系の症状
- 繰り返す嘔吐
- 強い腹痛
全身の症状
- 唇や爪が青白くなる
- 脈が触れにくくなる
- 意識がもうろうとする
- ぐったりする、尿や便を漏らす
食物アレルギー症状への対応の手順

アレルギー症状の緊急度により対応は異なります。まずは「緊急性の高い症状」であるかどうかを5分以内に判断します。緊急性が高い症状がみられれば、直ちにエピペンを使用します。緊急性が高い症状がみられなければ、その後の症状をよく観察し、その程度に応じて対応法を決定します。
①日頃からの準備
②アレルギー症状の確認
何らかのアレルギー症状がある(食物の関与疑いあり)
原因食物を食べた
(可能性を含む)
原因食物に触れた
(可能性を含む)
③緊急性が高い症状はあるか

緊急性が高いアレルギー症状があるか確認します。
全身の症状
呼吸器の症状
消化器の症状
④1つでも当てはまる場合
1つでも当てはまる場合、緊急性が高いアレルギー症状への対応として以下の手順を踏みます。
- ただちにエピペンを使用
- 救急車を要請する(119番通報)
- その場で安静にする
- その場で救急隊を待つ
- 可能なら内服薬を飲ませる
⑤当てはまらない場合
- 保護者から預かっている場合、内服薬を飲ませる
- 安静にできる場所へ移動する
- 少なくとも5分ごとに症状を観察する
症状チェックシート(PDF版)に従い判断し対応 - 緊急性が高い症状の出現には特に注意し「④1つでも当てはまる場合」に従う

エピペンの使用方法

アナフィラキシーの初期症状が見られたら、エピペンをすぐに使用することが推奨されます。エピペンの使用方法を確認し、緊急時には速やかに対応できるよう準備をしておきましょう。
使用手順
- ケースから取り出す
- しっかり握り、青い安全キャップを外す
- 太ももに押し当てる
子どもの太ももの外側にエピペンを垂直に押し当てます。服の上からでも注射可能 - 注射する
エピペンをしっかりと押し当てたまま5つ数える
オレンジ色のニードルカバーが伸びているか確認 - マッサージする
打った部位を10秒間マッサージする
⇓エピペンの使用方法の動画はこちら(外部リンク)
保育施設全体での組織的な対応

エピペンを使用する際に最も重要なのは、保育施設全体で組織的に対応する体制を整えることです。単独の保育士が対応するのではなく、全員が緊急時の役割分担を明確にし、連携して動けるように準備することが求められます。
エピペンの保管場所の共有
エピペンはすぐに取り出せる場所に保管し、全職員がその保管場所を把握していることが必要です。また、子どもの手が届かない安全な場所に保管することも大切です。また冷蔵庫等の冷所や、日光のあたる場所等の高温になる環境を避けて保管します。
役割分担の明確化

園内でアナフィラキシーが発生した場合に備えて、以下のような役割分担をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
- 全体管理:園長や主任保育士が全体の指揮を執る。
- 発見者の対応:子どもに症状が見られたら、すぐに園内での対応を開始。
- エピペンの準備:エピペンを速やかに取り出して準備。
- 連絡係:救急車の要請、保護者への連絡。
- 記録係:緊急時の状況や対応の詳細を記録する。
園内研修の実施

エピペンの取り扱いや役割分担については、定期的な園内研修や訓練を行うことが重要です。特に、アレルギーを持つ子どもが通う保では、全職員がエピペンの使用方法を理解し、いざという時にすぐに対応できるようにしておく必要があります。
緊急時の対応票作成と保護者との連携
エピペンを預かる場合は、保護者と緊急時の対応について事前に協議し、「緊急時個別対応票」(PDF版)を作成します。緊急時個別対応票を作成することで、子どものアレルギー発作発生時に、どのように対応するかが明確になります。


まとめ

アレルギーの疾患を持つ子どもにとって、保育園でのエピペンの対応は命を守るために欠かせないものです。緊急時に慌てずに迅速な対応ができるよう、普段からの準備と職員間の連携を深めていきましょう。またアレルギーに関する研究は日々進んでいくので、積極的に研修を受講し常に新しい情報を習得していくことも大切です。
