ハザードのパターンを把握~事故予防の意識を高めよう~

保育園での安全対策・事故予防には、日常的にハザード(潜在的な危険要因)を発見し、適切な対策を講じることが不可欠です。本記事では、事故予防において押さえておくべき10の主要なハザードを取り上げます。ハザードのパターンを理解し、自園に潜む同様のハザードを見つけ出すことが安全な保育環境を作るための第一歩です。

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ハザードとリスクって?

本題に入る前にハザードの概念を理解しましょう。リスクと混合しやすいのでそれぞれの違いを説明します。まずハザードとは、人の命、財産、環境などに悪影響を与える可能性のある「危険」のことです。そしてリスクは次のように定義される概念です。

リスク=ハザードの深刻さ×そのハザードで被害が起こる確率

たとえば自動ドアによる挟み込み事故を例にします。以前は自動ドアによる挟み込み事故が多く発生していましたが、現在ではセンサーの精度向上やドアの動作速度の適切な調整、定期的なメンテナンスの実施により挟み込み事故の件数は大幅に少なくなりました。自動ドアそのものはハザードですが、ハザードによる挟み込み事故のリスクは非常に低くなったのです。つまりハザードがどれほど深刻であっても、それによって危害が及ぶ確率を極限まで低くできれば、リスクはほぼゼロに近づけることができるというわけです。

ハザードがあっても子どもに危害が及ばなければOK

上述した通り、問題なのは園内外にハザードがあるかどうかではなく、ハザードによって子どもが危険にさらされるかどうかです。うちの園には危険な場所や物がないと考えることは大きな誤りです。「危険な場所」「危険な物」があるという前提で次のような対策をとることが大切です。

  1. 危険なものをなくす、とりのぞく
  2. 危険な場所や物に子どもを近づけないようにする
  3. 危険な物を子どもから遠ざける
  4. ①~③ができない場合は、子どもに深刻な影響が及ばないようにする

事故予防、怪我防止の最も有効な方法は環境改善です。ハザードを取り除く、あるいは子どもが絶対に近づけないようにすることが肝心です。

10個のハザード

ハザードを以下のようなパターンあるいは「環境や物の特徴」として把握する訓練をしましょう。そうすることでいつもと違う公園や遊び場、あるいは他園に転職した時など、危険を容易に発見することができるようになります。

①高さ・傾き

高さは「落ちる」「転ぶ」につながるハザードです。傾きは例えば道路や公園の坂が該当します。あらゆる高さ・傾きが子どもにとって危険だとは限りませんが、子どもの成長や発達に応じて、どの高さがどのように危険なのはかは異なります。どの成長・発達段階の子どもにとってどのように危ないのかを職員間で共有しましょう。

②でっぱり・段差

でっぱりや段差はつまづきの原因になります。でっぱりにつまづいて転ぶことは大人でもありますよね。子どもがつまづいて転ぶこと自体を全て予防することはできませんが、転んだ先に鋭いものや堅いものなどがなければ大きな怪我は防ぐことができます。

③すきま

遊具や家具のでっぱりや破損箇所は、服やカバン・水筒の紐などがひっかかった際に非常に危険です。特に遊具のすきまは頭がはさまってひっかかり、首つり状態になるリスクもあります。紐類がひっかからないに遊具や家具のでっぱり、破損箇所をなくすことが第一です。また子どもたちがカバンや水筒を首にかけたまま園庭や公園などで遊ばないよう保護者や子どもに伝えることも有効です。

④とじこめられる

本棚や資材庫、調理室など、子どもがとじこめられる可能性がある場所は園内にたくさんあります。とじこめられるリスクをなくすには鍵と人数確認が不可欠。中に子どもがいないことを確かめ鍵がかかっていることを確認するルールを職員間で徹底します。また活動の節目ごとに園児の人数確認を行います。かならず複数の職員で声を出して数え、子どもにも返事をさせます。

⑤表面

コンクリートやタイルなどざらざらした表面は擦り傷や切り傷の原因になり、つるつるした床面は転倒の原因になります。特に夏のプールまわりでは子どもが足を滑らせて転倒するケースが多いです。そのような場合は滑り止め効果とクッション効果のあるシートを活用しましょう。

⑥熱

夏の金属遊具や冬のヒーターなどがハザードに該当します。ヒーターはしっかりした柵できちんと囲むことが重要です。

⑦水

子どもはほんの数センチの水でも溺水は起こります。汚物洗い槽や園内のプール、その他の水のたまった場所については、フタをする、水を抜く・捨てる、柵をするなど、子どもが近寄らないようにしましょう。

⑧口に入る(誤嚥窒息)

誤嚥窒息というと、ミニトマトや豆類など「球」の食べ物というイメージが強いですが、実際には切り口が円になる食べ物のほか、子どもが口にいれられる物(ティッシュペーパーなど)でも誤嚥窒息は起こります。切り口が円になる食べ物の代表例がソーセージです。食材の切り方にも工夫が必要です。

⑨動物・虫

お散歩中に子どもが近所のペット犬や猫に近づこうとすることはよくあることです。動物に関連する怪我というと実は家庭で飼われているペットによる怪我が多いです。子どもが気安く犬や猫に近づかないように注意しましょう。虫については特にハチ刺されはアナフィラキシーを起こす危険があります。ハチがたくさんいるのを見つけたら子どもを遠ざけましょう。

⑩他児とのかかわり

園における子どもの怪我で多いのは、他の子どもとのかかわりの中で起こるものです。「かまれた」「ひっかかれた」などです。ヒヤリハット報告書を見返すと、多くの場合が同じ子が「する側」「される側」になって、何度も同じような事象が起きてはいませんか?同じこどもたちの間で二度、三度、同じような事象が起こっている場合、子どもたちが互いに適切な距離感を保ちながら、安全に遊べるような環境をつくる必要があります。たとえば、物理的に距離を取れるように遊びのゾーンを分けたり、特定の子どもたちが一緒に遊ぶ時間や場所を調整することで、トラブルを未然に防ぎます。

認知バイアスに要注意!

事故や怪我のニュースを耳にした際に、私たちが陥りがちなのが「認知バイアス」という思考の偏りです。認知バイアスとは、物事を自分に都合よく解釈しがちな人間の心理のことです。たとえば、他の保育園で事故が起きた場合、「あの園だから起きた」と特定の場所や人に原因を押し付けてしまう傾向です。そうすると「うちの園では大丈夫」という誤った安心感を抱いてしまい、自園のハザードを見過ごす恐れがあります。

事故防止において最も重要なのは、他の園で起きた問題を「自分事」として捉えることです。「あの園で起きたから自分の園では関係ない」と考えるのではなく、「どんな場所で、どのような経緯で事故が起きたのか」「うちの園でも同じことが起こり得るかもしれない」と考える姿勢が大切です。

まとめ

ハザードは一見すると些細なものでも、重大な事故につながることがあります。ハザードのパターンを理解し、自分の園にも同様のハザードが存在しないか、日常的に意識を向けることが大切です。また認知バイアスに囚われず、他の園で起きた事故を「自分事」として捉える意識を持つことでさらに効果的な事故予防に繋がります。日々の保育活動の中で、事故防止に向けたハザードの発見と対策を進め、安全な保育環境を整えましょう。

参考文献:乳幼児の事故予防(掛札逸美)